こんにちは、アキです。
日本一の紅葉とも呼ばれる北アルプス「涸沢カール」の紅葉を撮影するべく1泊のテント泊登山をしてきました。少しピーク前だったけど、それはもう満足のいく絶景を満喫できた。
僕にとっては初の北アルプス登山。これまでは富士山撮影のできる山域でしか登山はしたことがなかったけど、今年は“登山”そのものを楽しもうという気持ちが強まったこともあり北アルプスへの挑戦となりました。
今回の【前編】では涸沢カールまでの道のりや、奥穂高岳アタックの様子を綴ります。
もくじ
涸沢・奥穂高岳の登山記録
名称 |
|
出発地点 | 上高地駐車場(バスターミナル) |
駐車場 | さわんどバスターミナル |
上高地を出発して涸沢カールを目指し、テント設営後に奥穂高岳アタックをするという計画です。上高地からコースタイム3時間ほどの長い平地歩きになり、横尾からようやく登山道が始まる。全体で涸沢カールまでは約6時間の登山コースとなっています。
上高地まではバス・タクシーでアクセス
上高地まではマイカー規制によりバス・タクシーでの移動になります。まずは「さわんどバスターミナル駐車場」へマイカーを駐車する必要がある。24時間営業で、約2,000台も収容できるので満車の可能性は低いと思います。
沢渡(さわんど)駐車場周辺のご案内 | 上高地公式ウェブサイト
朝一のタクシーでスタートダッシュ
紅葉シーズンはバス待ちの大行列が話題になっているのをよく見かける。夜中3時には行列ができているとかどうとか。それを警戒して早めに「さわんど駐車場」へ乗り込んでおいた。1時頃に到着し、混み合っている様子もなくすんなりと駐車できて一安心。
4時くらいまで仮眠をとった。
4時過ぎにバスターミナルに行くと自分ひとりだけで拍子抜け。
行列は一体どこへ…
それもそのはずで当日の天気は朝から午前にかけての雨予報。しかも平日なので当然といえば当然の結果。某予報サイトの登山指数はCだったが、GPV予報を見る限りでは雨は2時間も耐えれば通り過ぎる。中止にするような天候じゃないので登山決行です。
松本市の天気が雨や曇りだったとしても涸沢は雲の上という可能性もある。「登っていれば雲の上に出るだろう」とポジティブに考えるようにした。
バス・タクシーは5時くらいに合わせての始発となる(途中のゲートが5時に開くため)
僕は少しでも早くスタートダッシュを決めたかったので高くなるけどタクシーを選択(バス行列を回避するためにタクシーが使われるが、ピーク時期はタクシーも行列だったりするらしい)
タクシーの準備が整ったところでタイミング良くもう1人ハイカーが現れ、2人で乗車できたので割り勘となり定額4,600円のところ半分の2,300円でした。ありがたや。
5時のゲート開門まではタクシーに乗ったまま待機。待っている間がすごい土砂降りで少し気が重くなった。今回の登山は予定が詰まっているので雨だとしても朝一のスタートをしたかった。
予定通り一番乗りで上高地バスターミナルへ到着。
しかし出発前にオニギリを食べたりレインウェアなど防水対策をしているうちに後続タクシーやバスがぞろぞろと現れた。一番乗りした意味がなかったんじゃないかな。
5時30分頃、まだ薄暗い中をスタート。
横尾まで2時間強の林道歩きスタート
横尾までは平地でとにかく長い林道歩きになる。コースタイム3時間ほど。道中にはキャンプ場やロッヂもあるので前泊しておけばバス・タクシー組よりも先に出発ができる。
どんよりとした梓川と河童橋を横目に足早に通り過ぎる。晴れていれば綺麗な景色なんだろうけど、帰りにでも見れたらいいや。
発表されたばかりのApple Watch SEを登山やランニング用に購入。しかしYAMAPは使えないので大して役に立たない。心拍数を測るくらいだ。
やはり雨はタクシーに乗っているときがピークだったようで弱まっていった。これは思っていたよりも早く止みそうだ。
歩いていると徳沢のキャンプ地の草むらにライチョウを発見。クーンクーンと泣きながら雨の中をジッとしていた。これ本物だよね?
残念ながら雨でコンデジすらザックの中だったのでiPhone撮影。
7時40分頃、2時間強で横尾へ到着。
コースタイムを1時間くらい巻けた。本当にずっと横移動でほぼ競歩みたいな状態だったのでランニングの成果がここで出たと思う。
予報通り雨も止んで晴れ間も見え始めていたのでレインウェア類を脱ぐ。
涸沢へ向けて登山のはじまり
横尾の吊橋を渡った先から本格的に登山が始まる。
雨は通り過ぎ、晴れ間が出てきたり山々が姿を表してテンションが上がってくる。
吊橋から見た梓川が綺麗。
ここは標高1,620mほどで、まだ紅葉は確認できない。
山の上のほうが黄色に色づいているのが見えてきた。雲の演出もイイ感じ。
やはり山々の景色が見えるだけで気持ちの良い山歩きになる。雨は嫌いだ。
また吊橋が登場。ちゃんと登山が始まるのはここからでした。
登山前に一息つくハイカーが多いポイントだ。
少しずつ標高を上げていくと、周囲はだんだんと黄色に色づいていく。
景色の開けた場所へ出る。雲が良き。
人がいた方がスケール感が伝わりやすいので、休憩していた女性ハイカーさんのお姿をお借りします。
前半の平地歩きでけっこう体力を持っていかれたようで堪える。
色づきが黄色からオレンジへと変わり始めた頃には涸沢カールが見え始めてきた。
ゴールが近いぞ。
まだ緑の割合が多いが紅葉の景色が広がる。青空はやくきてくれー。
涸沢ヒュッテと涸沢小屋の分岐へ到着。ほぼゴールですね。
念願の涸沢カールでテント設営
10時30分頃、涸沢ヒュッテに到着。
上高地からのコースタイムは約5時間。平地歩きでタイムを巻いたが上りでペースダウンして標準タイムになったようだ。「だってテント装備だし」と言い訳をしておこう。
到着してはじめに目に入る涸沢ヒュッテ前の紅葉が綺麗でため息が出る。ピークには少し早いタイミングだったが、それでも初の涸沢カールという補正込みで感動が増す。青空こそないが山々の稜線まで見えている。
さっそくテント場の確保をします。
ご覧の通りガラガラなので場所取りの心配は無用だったようだ。紅葉前の4連休のときは最大850張りだったという情報もあるので、この空き具合には拍子抜け。このためにスタートダッシュをしたのに張り合いがないな。やはり平日最強。
向こう側に見えている建物は涸沢小屋ですね。
テント場は予約不要、大人1人1,000円。
先にテント設営をしておき、15時10分〜17時の間に受付を行うシステム。
テント場は岩がゴツゴツしているので、追加料金500円でコンパネを使用することも可能。早いもの勝ちで取り合いになるという情報もあったがたっぷりと余っていた。使ってみようかなって手に取ってみると意外と重たかったのでやめておいた。
スノコ的なものもある。借りられるのかな?
テント場は好きな場所を選び放題。ちなみに本日のザックは21kgでした。軽くしようという努力はしているけど、なかなか20kgを切れない。なんでだろう。
カメラをZへ移行するので少しは軽くなりそう。
日本第3位の奥穂高岳へアタック
さて、一息ついたらここからが本番。
僕は北アルプスへ足を踏み入れたのが初めてです。「北アルプスデビュー」と公言するからにはどこかしらのピークを踏まないといけないという使命感があった。
問題はどこへ登るか。
テント受付の制限時間の17時までに戻る必要がある。
北穂高岳の山頂の大展望は魅力的だが、難易度やコースタイム的に少し難しいと判断。なにせ「日本三大岩場」の1つなので今の僕にはまだ早い。せめてもう1泊して時間に追われずに行くような山だな。そんなわけで百名山である奥穂高岳にしようと決めた。奥穂高岳もそれなりに岩場や鎖場があるので油断は禁物。気を引き締めます。
12時頃、奥穂高アタック開始。
最小限の荷物で17時までには余裕で戻れる予定。
ナナカマドが見事に真っ赤です。紅葉はカール全体で見渡すのもいいけど近づいて見るのも悪くありませんね。
先行ハイカーもいると安心感ある。
紅葉はすべてが真っ赤というよりも、赤→オレンジ→黄→緑のグラデーションが好き。
ザレ場が広がるので、浮石に気をつけて登っていきます。
12時50分頃、「ザイテングラート」の取り付き点に差し掛かる。初心者にも難しくないとされているけど、本格的な岩場が続くので油断は禁物なエリア。
基本的にはルート上の岩には○印があるので、見落とさなければ危険は少ない。通れそうでも危険な箇所には✕印があるので分かりやすい。
しかし、途中で僕は疲れが出ていたのか✕印がなぜか+印に見えてしまい「ああ、プラスだからここを進むんだ」と解釈して進んでしまった。2歩くらい進んで気がついて「疲れてるんだな」と思い休憩にした。なんやねんプラスって。
精神状態で認識が変わるんだな。山の怖さ。そもそも朝にオニギリ2個を食べてからは行動食だけで、食事という食事はとっていなかったのが問題かな。
丁度いい岩に腰掛けて行動食の柿ピーとミックスナッツをボリボリ頬張る。ハムスターのように。穂高岳山荘でちゃんと食事をとろう。
涸沢から見上げる景色もいいけど、ザイテングラートから見下ろす涸沢の景色もなかなかだ。
ずっと岩場が続き、立ち止まる頻度も増えてきた。バテてきて集中力が切れやすいのは、食事以外にも標高3,000m近くで空気が薄いせいもありそう。
でもここを重装備で登って穂高岳山荘でテント泊する人もいるんだよな。すごい。
13時30分頃、ようやく穂高岳山荘へ到着。
涸沢からは1時間30分かかった。メシにするぞー。
穂高岳山荘へ入る前に山頂方面へのルートを見ると急登が待ち構えていた。ガスっていてラスボスステージ感ある。ひええ。
とりあえず見なかったことにして食事だ。
悩んで注文した味噌ラーメンにはバターが浮いている。ありがたいカロリー摂取。
お土産のバッヂもこのタイミングで購入。
種類がたくさんあったけど鈴が付いてて可愛いやつを選んだ。山小屋には少しでも貢献するように登った山にバッヂが売っていれば購入することにした。
腹ごしらえが済んだら奥穂高アタックの再開。
光が差し込んで道が切り開かれた(ように見えるやつ)
序盤はハシゴでほぼ直角に標高を上げていきます。
ホムセンで買った作業用グローブがよかった。通気性が悪いがグリップ力に全振りしているので岩場や鎖場に重宝している。
ひたすら○印を辿って登ります。
穂高岳山荘がまだ近くにあるのにこの高さなので相当な急登だったようだ。
個人的には奥穂高岳のコースで一番のスリルポイントだった。慎重に登れば初心者の僕でも難なく通過できました。雨や強風などの悪条件でもなければそれほど危険ではないと思います。
ちなみに、涸沢からちゃんとヘルメットを装備しています。
稜線に出たことで反対側の景色が広が…
ってはいないですね。ガスガスだ。
序盤の急登を超えたらあとはザレ場を歩き進める。
途中でガスが一瞬だけ晴れてジャンダルムが見えた。
僕は基本的にスリルは求めていない。安全な場所から写真を撮りたいだけだと思っていたけど、北アルプスに魅了されつつあり、いつかジャンダルムまで行くことがあるのかもしれない。
頂上らしきところが見えてきた。
穂高岳山荘からここまですれ違ったのは2パーティと単独ハイカー1人。もしかして奥穂高岳は不人気なのかな、みんな北穂高岳へ行くものなのかなと不安になる。
14時30分頃、百名山・奥穂高岳(標高3,190m)へ到着。
標高3,190mは、南アルプス間ノ岳と同率で日本3位の標高となる。僕はこれで富士山、北岳、間ノ岳、奥穂高岳と日本トップ4をピークハントした。
なんやかんや富士山が一番ツラいかな。高山病で。
そして虚無。
奥穂高岳からジャンダルムへと続く稜線が見渡せるはずだったが、これはまた来いということなのか。途中で一瞬だけジャンダルム見れたからいいか。
ここで朗報。
今回の登山はなんと…
あとは下山するだけです。
そう思うと気持ちが随分と楽になる。
帰り道に伝説のピッケルが現れた。選ばれた者にしか引き抜けないやつ。来た道をピストンしているはずなのに往路では気が付かなかった。ガスのせいで見つけられなかったのかな。
稜線上から豆粒な涸沢ヒュッテが見えたところで、ふと我に返りApple Watchを確認するとすでに15時近くだ。17時までに戻らなきゃテント受付ができずに撤収するはめになる。
山頂まで2時間30分かかったので、下山には1時間30分もあれば間に合うだろう。
やはり今回の一番の玉ヒュンスポットは穂高岳山荘前の急登だろう。
下山時は景色を堪能する余裕がある。ザイテングラートから見下ろす景色も圧巻だ。
この時期の涸沢カールは15時も過ぎたら影ってしまうので紅葉が映えない。紅葉を撮影するなら日光が欲しいですね。翌朝の撮影のためにロケハンしておかないと。
やっぱりこういうグラーデーションになっているやつ好き。
16時頃、テント場へ帰還。
テント受付に1時間くらいの余裕があった。テントは増えていたけどやっぱりまだガラガラだと思う。850張りとか想像できないな。
奥穂高から1時間30分ほどで下山。週1〜2回ランニング、月1〜2回登山しているレベルの僕の脚で奥穂高アタック往復4時間でした。参考までにどうぞ。
クタクタになりロケハンできず
さっそくテントの受付を済ませてしまいましょう。
小屋前で配布されている用紙に必要事項を記入して提出します。受付時には額にピッと当てる赤外線の体温計で熱の有無を確認しました。テント場ついてすぐにビールを始めてしまうと体温が上がって引っかかってしまうかもしれないので注意。
受付と利用料金の徴収が終わるとテント設営許可証が手渡される。これをテントの見やすい場所にぶら下げておけばオッケーです。
ここらへんにこうやってぶら下げた。
涸沢ヒュッテの売店を横目にトイレへ行くと、自販機になんとハイボールを発見。涸沢ヒュッテといえば「展望テラスで生ビール」がセオリーなところもあるでしょ。でも僕ハイボール派なのですみません。晩御飯まで我慢できずにポチってテントへ帰りました。
下山直後で、それはもうコーラの如くごくごく飲みますよね。自分でも思っていた以上に疲労していたようで、ハイボールを飲み終えたところで一瞬でウトウトし始める。
でも翌朝の撮影のためにロケハンしておかないと…
とか思いながら横になった瞬間に気を失う。
ぐーすか…
ザイテングラート(山頂から横に張り出す岩尾根のこと)
涸沢から見たこの部分。
ザイテングラートを登りきった先に穂高岳山荘が待っています。