こんにちは、アキです。
北アルプス北部エリアの『唐松岳・五竜岳』の登山記録【後編】です。
前編では八方尾根から唐松岳を登頂、縦走して五竜山荘へ到着しました。後編では山小屋でのエピソードや、翌朝の五竜岳頂上へのナイトハイク、遠見尾根での下山、下山後のエピソードなどです。
2日目も天候に恵まれました。
↓前編はこちら。
『唐松岳・五竜岳』の登山記録【後編】
唐松岳〜五竜岳(南下縦走) / あきさんの西遠見山・大黒岳(長野県)・大遠見山(長野県)の活動データ | YAMAP / ヤマップ
五竜山荘から五竜岳頂上までは1時間弱ほどの距離をピストン。
その後は遠見尾根を下山するだけなので、2日目の登山ボリュームは1日目に比べてかなり少なめ…のはずだったのに、非常にしんどかった。がっつり集中力を切らすバテ方は久しぶりだったなぁ。
順を追ってエピソードを紹介します。
五竜山荘へ到着
『五竜山荘』へチェックイン、個室へ荷物を置いたら…まずは夕食前に1杯。僕はビールが苦手なのでノンアルコールにしたけど。(ハイボール派)
小屋前のテーブルベンチで翌日のプランを相談しながら一息つきました。相方がすでに五竜岳に登ったことがあり、そのときの写真を見せてもらって撮影計画を立てました。頂上からの景色は意外と見どころが多くて驚いた。
翌朝の撮影が楽しみだ。
五竜山荘には自販機じゃなくて冷凍ショーケースがあってドリンク類が豊富でした。ポカリや水などの行動用の水も確保できます。
小屋前の注意看板。
小屋から頂上へのピストンは2〜3時間ほどかかるので手ぶらで登るのは危険。レインウェアなどの最低限の装備は持っていきましょうね。牛首の鎖場ほどじゃないけど鎖場もあるのでヘルメットも欲しいところ。
そして夕食タイム。
カレーライスに、味噌汁、ふわふわオムレツに何かのフライ、野菜サラダとフルーツ。(カレーライスがおかわり可能)箸置きにされているのは長野県定番のお土産『雷鳥の里』です。
こんな山の上でバランスの取れた食事をできることに感謝です。
山小屋ありがてぇ。
ちなみに翌朝は朝早くから頂上へと登るため朝食は弁当に変更。夕食後に予め弁当を受け取っておくシステムでした。夜食とかに食べてしまわないようにね。
五竜山荘からの日没風景
日没近くなると雲が増えて頂上が隠れ、周囲もガスガスだったので夕景撮影はしないつもりでしたが、小屋内だと電波が弱かったので外に出てみました。
偶然にもインスタのフォロワーさんが同じく五竜山荘へ来ていたので、小屋前で少しお話をすることができました。同じく静岡(なんなら僕よりも遠い距離)から五竜岳まで訪れていたという。
同じ日にすごい偶然ですよね。
こんな長野県の遠い山の上で富士山撮影をしている静岡民と会えるなんて。
話をしていると、僕と同じような環境のようで「富士山撮影に対するモヤモヤ」を共感できた気がします。
同じ静岡県民で富士山撮影が好き、でも富士山からは意外と距離があって山麓まで行ける頻度が低い。そうなると山麓に在住するフッ軽カメラマンには到底敵わない。季節モノなどの流行りについて行けない。など…
僕はここ数年は「自分のペースで楽しむこと」に重点を置いています。
リアルタイムな情報発信について行けずにモヤモヤするくらいならSNSを開く頻度を減らし、変わりに1回の活動を丁寧に扱うコンテンツ(YouTubeやブログ)ばかり見るようになったかな。
自分のペースで楽しみましょう。
会話をしながらも目の前の景色をiPhoneだけで撮影。
ガスに包まれながらも光が差し込んでいて面白い展開を魅せます。反対側にはブロッケン現象も薄っすらと確認できた。でも遠くの景色が見えないのでロケハンにはならなかったかな。
混み合っている様子もなくテント泊が快適そうだ。もしテント装備だと20kg超えちゃうので遠見尾根からの五竜岳ピストンにするかな。
今回は山小屋泊だったし牛首の鎖場にビビっていたので、荷物は最小限に抑えたつもりなのに測ると15kg弱ありました。レンズも1本なのになんでだろう。もっと軽くしたいなぁ。
UL装備に手を出すべきか…。
五竜岳ナイトハイク
さて、我々の寝床は2階の個室。
2人で使用するには贅沢な広さ。
女性がいると個室優先になるっぽい。男性のみだと1階の半個室のような場所になると思うけど、1階は混み合っている様子もなくそれなりに間隔を開けて伸び伸びとスペースを使えそうでした。
とりあえず個室ありがてぇ。
山小屋の布団は不特定多数の人間が使用します。
直に触れずに使用するためにシンナーシーツ等が必須になります。自己防衛のため、布団を扱う小屋番さんのため、次に使用する登山客のためでもある。
これからはインナーシーツが山小屋泊での必需品の時代。
もちろんシュラフを持参してもいいですね。
五竜山荘では使い捨てのインナーシーツ類が販売されていたので、持参しなくてもなんとかなります。(使用後は持ち帰って処分になります。)
僕はこの日のためにモンベルのレクタングラーシーツを購入。安いし軽量コンパクトなので用意しておくと安心かと思います。
20:00には消灯、翌朝3:00に起床。
オフトゥンが快適でぐっすり眠れました。
起床後は軽食と支度を済ませたら、御来光のために五竜岳へとナイトハイク開始します。御来光は5時くらいなので、それまでに頂上へ着けば問題なし。
道中は鎖場や岩場などもあるんだけど、暗くて崖下が見えないので逆に怖くない。景色がよく見える方が高度感があって怖くなるのだと思う。
4:27頃、五竜山荘から約44分ほどでほぼ頂上へ到着。
五竜岳(標高2,814m)は日本百名山です。
空が明るんできたけどまだ薄暗く、御来光までには余裕でした。
道中で他ハイカーは見かけなかったけど頂上には先客ハイカーが1名。静岡から来ていたフォロワーさんがすでに撮影を楽しんでいた。星空も撮影していたようです。
僕らが来るまでは頂上を独り占めでしたね。お邪魔します。
頂上付近には「八峰キレット」への分岐。
ここから五竜岳をさらに南下して鹿島槍ヶ岳(標高2,889m)へと縦走することができます。八峰キレットとは、北アルプスにある大キレット、不帰キレットと並ぶ『日本三大キレット』のひとつ。
牛首の鎖場とかいうレベルじゃないですね。
でもいつか歩いてみたい。
五竜岳からの景色
さて、今回の北アルプス登山の一番の目的…
そう、富士山!
以前に登った燕岳や奥穂高岳からも見えるはずだったが撃沈…。なんとしても北アルプスからの富士山撮影をしたかったのです。
五竜岳の頂上から富士山が見えることはリサーチ済み。
富士山の見える方角もばっちり把握。
果たして結果は…
遮るものがなく富士山の姿を捉えることができました。
直線距離で約170kmの遠景富士がオレンジに染まる背景に浮かんでいた。かなり霞んでいるけど冠雪のない夏富士なのでシルエットだけで上出来です。ちなみに富士山のすぐ左の山稜は八ヶ岳連峰。
今回の北アルプス登山の一番の狙いに歓喜。
焦点距離200mmでトリミングしているのでもっと望遠でもよかった。
ニコンさんZマウントでそこそこ軽量コンパクトな70-300mmとか100-400mmを早急によろしくお願いします。と言うか24-105mmはよ作って!
良い感じの場所があったので、カメラをセットして富士山と自撮り。このとき着ていたシェルがマスタード色だったので、上半身裸に見えたり見えなかったり…
このあとの御来光は雲に遮られ、日の出後しばらくは陰っていました。
しばらくして立山方面を見ると、剱岳の下あたりに影五竜が映し出されている。
これは相方に教えてもらわなかったら気が付かなかったであろう見どころのひとつ。剱岳と五竜岳の面白い共演ですね。
剱岳、あそこからこちらを眺めているハイカー達も居るんだよなぁ。
明るくなってきたことで五竜岳の頂上も御来光狙いのハイカーで賑わってきました。九州から来ていたパーティー、7日間かけて槍ヶ岳まで縦走予定の単独ハイカーなど様々、頂上などで記念撮影の撮り合いでコミュニケーションをとるのは登山のよくある光景。
八峰キレット方面、鹿島槍ヶ岳に日差しが当たり始めて綺麗ですね。
鹿島槍ヶ岳は南峰と北峰に分かれており、その右奥には本家の槍ヶ岳が並んで見えています。どことなく形状が似ていますね。だからネーミングが槍ヶ岳なのかな。
あんなに小さくても本家槍ヶ岳はカッコいい。正直なところ剱岳に剱感は感じないのに、槍ヶ岳は名前負けしていない槍感を感じるな。さすが槍様。
ふんわりと光の差し込む、唐松岳・白馬三山方面。
360度余すことなく絶景を堪能できましたね。
6:45頃、五竜山荘へと下山を開始。8:00くらいには遠見尾根へと下山開始をしていたかったので、名残惜しいけど五竜岳頂上とはお別れです。
同じくして他ハイカー達も揃って下山開始の雰囲気でした。
朝食と下山準備
下山中に見えた唐松岳方面の景色。
昨日登ってきた八方尾根と唐松岳、縦走してきた尾根、宿泊したミニチュアな五竜山荘が並ぶ。振り返って「あそこを歩いてきたんだぁー」って景色を眺めるのすごい楽しい。
眺めていると「次はあっち方面へ歩いてみたい」とか「あそこを歩いて登山ログを繋げたい」とか思うようになりますね。白馬三山と八峰キレットを歩きたくなったなぁ。
五竜山荘へ帰還したら、荷物をまとめてチェックアウト。
小屋前のテーブルベンチで朝食タイム。
夕食後に受け取っていた弁当は中身を見ることなく楽しみを残しておいたのだ。キンキンに冷えたコーラと、相方が持参した唐揚げの缶詰と味噌汁をお供に頂きます。
というかホテイの缶詰って焼き鳥はよく知っているけど、唐揚げなんてあるんか…
開封すると、えび天と焼き鮭の弁当だった。
弁当にも雷鳥の里を付けてくるとはすごい推していますね。そしてこれは弁当が小さいわけではなく、梅干しが巨大なんですよ。めっちゃデカイの(笑)
目の前には先程まで登っていた五竜岳と青空が広がる。
この景色を眺めながらの弁当は格別だ。めちゃくちゃ美味しい。
邪魔してくるやつ。
白馬村キャラクター「ヴィクトワール・シュヴァルブラン・村男III世」
名前が長すぎて覚えられない、村男って呼んでます。
相方が持って来たやつなんだけど、これをザックに付けていると「山ガールっぽくて嫌だ」ということで僕のザックへぶら下げた。
遠見尾根を下山
8:15頃、遠見尾根にて下山を開始します。
下山前にフォロワーさんともご挨拶。
また富士山界隈の撮影スポットでお会いできるかもしれない。
この時間帯には他ハイカーもぞろぞろと下山していく感じでした。8時頃にスタートすればゆっくりペースでも12時くらいには下山完了できる予定。
五竜山荘から1分ほど、白岳(標高2,541m)というマイナーピークがあった。
唐松岳方面の尾根の景色はこの白岳が最後。
牛首の鎖場とか、ライチョウに遭遇したりとか、楽しい縦走コースだったなぁ。
日当たりが良いのに雪がたくさん残っている不思議。
あとはもう遠見尾根で下山するだけなので、楽ちんだと思っていたけど…
なにか違う。
意外としんどい。
1日目よりもしんどい。
尾根は全体的に草木が遮っていて風がまったく通らない。
そして梅雨明け直後の夏の日差しが暑すぎる…
登ってきた八方尾根とはぜんぜん状況が違う。
八方尾根は風通しがよく雪渓のひんやりした空気が気持ちよかったのに、遠見尾根はまさに灼熱地獄だ。しかも地味にアップダウンを繰り返しているので、下山しているだけなのに体力をそこそこ消耗する。
雪渓のない標高まで来ると、気温は高くなるし蒸し蒸ししてくる。
相変わらず草木に遮られて風が通らない尾根歩き。
ここで集中力がプツンと切れた。
1日目から総じて脚の調子が良くてスイスイ歩いていたが暑さでバテてしまった。こうなると僕は息を吐くように「あっつー…」「しんどー…」と漏らすようになる。暑さに弱いなぁ。
こんなにガッツリと集中力を切らすのは久しぶりだな。
一見、開放感のありそうな尾根だけど無風。
この時期の遠見尾根はヤバい。
ここを登ってくるハイカーとすれ違うんですよ。すごいなぁ。
10:40頃、リフト乗り場へ到着。
五竜山荘から2時間30分くらいかな。
それでも標準タイムは巻けたっぽい。
記録撮影をする余裕もなく無心で歩き続けましたよ。ほんとにアップダウンが多くて、バテてからの登り返しがダルかった。
で、目的の「白馬五竜テレキャビン」の山頂アルプス平駅へ行きたいわけですが、リフトに乗ってしまうと駅まで少し距離があるようです。
- 駅まで10分歩いて下山
- リフトで10分降りて、駅まで5分の登り返し
この二択、どちらを選びます?
バテバテで「登り返し」がなんか嫌だったので僕は①を選択した。ちなみに相方はここまでバテていないんですよね。強いなぁ。
歩いて下山する場合は「白馬五竜高山植物園」の中を通過します。
ここのロックガーデンというエリアにてコマクサの群生を見られたのは良かったなぁ。コマクサは唐松頂上山荘の近くで少し見かけたくらいだったけど、高山植物園にたくさん咲いていた。
高山植物の女王コマクサ。
岩しかないところに咲いているのが不思議な花です。
相方が御年配の観光客と話し始めたときは、僕はさすがに座り込んでしまいました(笑)
11:00頃、無事に山頂アルプス平駅へゴール。
標高1,515mの駅です。
口がソフトクリームを求めているので、花なんかに目もくれずにレストランへと直行。
残りはリフトで下山
「山頂レストラン あるぷす360」にて長門牧場バニラソフトクリームを購入。
下山直後のソフトクリームって最高ですよね。
お腹も空いていたんだけど冷たいものしか受け付けないな。
次は特選生絞りすいかジュース。
使っているのはスイカと塩だけなのにクリーミーで甘いドリンク。めちゃくちゃ美味しい。なんなら冷水機の水が最高に美味しい。北アルプスの天然水なのかな。
疲れが癒されたところで「白馬五竜テレキャビン」で麓まで降ります。
8人乗りゴンドラだけど、やはり2人で乗車できました。
大人往復2,200円、片道1,500円です。
10分ほどで「とおみ駅」へ到着。
ありがたき文明の利器。
ご苦労さまでした。
お土産売り場には「ヴィクトワール・シュヴァルブラン・村男III世」のグッズが売っていました。ゆるい表情にもふもふのモヒカンが可愛いですね。
なんとこの長い名前の覚え方が公式サイトに紹介されていました。
反復と音読
なるほど。
下山後の楽しみ
とおみ駅のある「エスカルプラザ」から駐車場のある「八方の湯」まではタクシーで移動し、まずはひとっ風呂浴びますよね。
大人800円、フェイスタオル(250円)も購入した。
登山をすると温泉タオルが増えていく。
そして計画段階から下山後の食事は何にしようか悩んでいました。白馬村に来たら何を食べたらいいのか調べると、信州豚と信州蕎麦の2つが有名どころらしい。
トンカツ定食か、冷たい蕎麦か…
下山後の気分で決めることにしていたが…
冷たい蕎麦の一択でした(笑)
白馬村は蕎麦屋が多くて悩んだけど「そば神」さんを選びました。
僕は天ぷら蕎麦を注文。信州白馬の手打ち蕎麦はコシがあり美味しいのは当然として、揚げたてさっくさくの天ぷらに感動したよ。
まずはゴーヤ天ぷら。
ゴーヤですよゴーヤ。ゴーヤチャンプルーを何度か食べたことがあるけど、正直なところゴーヤを美味しいと思ったことが一度もありません。ゴーヤを名産品にしようと無理やり食べている感が否めなかったです。そんなゴーヤが天ぷら姿で登場。
しかし揚げたてのゴーヤ天ぷらはめちゃくちゃ美味しかった。サクサクの衣に包まれたゴーヤはホックホクで苦味が和らいでいた。ゴーヤって美味しいんだ…
次は大根天ぷら。
大根ですよ大根。大根って天ぷらにします?初めて見ましたよ(ただの情弱)サクサクの衣と一緒にジューシーな大根の歯ごたえが絶妙な組み合わせ。天つゆとのバランスも良い。
そして、えび天。
普通えび天って衣で大きさを盛っているでしょ。どんなに肉厚な海老を使っていても衣で嵩増しされるでしょ。でもね、このえび天は見えている部分がすべてが身でした。衣で盛られているんだろうなという部分も海老でした。(もはや何を言っているのか分からない)
そば神、天ぷらのためだけに訪れてもいい。
ご馳走様でした。
登山後は何を食べても格別に美味しいという話です。
帰り道の楽しみ
帰り道には「道の駅白馬」にてデザートのクレープ。
シンプルな苺クレープにしました。
白馬村で美味しいものたくさん食べたなぁ。
さらに道中、諏訪湖SAに立ち寄ると2重の虹が出現しました。
ちなみに僕は長野方面へ来ると必ず野沢菜を買います。めっちゃ好き。
唐松岳・五竜岳の感想
静岡からの距離は遠いが、変に山道を走行することもなくアクセスはしやすい。駐車場や温泉、飲食店が豊富。登山スタート地点まではリフトで標高を稼げるので、体力的にも手軽な部類かと思います。
八方尾根の景観の良さ、ライチョウの生息地、牛首の鎖場でのスリル感など見どころが多く、退屈のしない縦走コース。今回の山行は文句なしに楽しめました。
宿泊営業を休止せざるを得ない状況でもその他サービスを行ってくれていた唐松頂上山荘、快適に休憩できた五竜山荘など、山小屋の運営には感謝しかありません。
北アルプスは整備が行き届いていて安心して登山ができますね。
唯一の苦労は「暑さでバテたこと」のみ。
ランニングを増やして心肺的な体力には自信があったけど、暑さ耐性ってどうやって強化すればいいんだろうな。サウナとか…?
仕事の関係で1泊以上が不可能なので、行ける山が限られますが今後も北アルプスは少しずつ歩きたいですね。暑さに弱い今の僕に1泊槍ヶ岳は可能なのだろうか…
がんばろ。
使用した撮影機材