紅葉の涸沢カールへ【後編】日本一の紅葉に囲まれて迎える朝とモルゲンロート

この記事は【後編】です。

こんにちは、アキです。

引き続き「涸沢カール」の紅葉を撮影するための1泊テント泊登山の記録です。前編では奥穂高アタックなど登山記録メインの話でしたが、今回は涸沢カールでの撮影の話になります。

涸沢・奥穂高岳の登山記録

ここまでの流れまとめ
  1. 上高地へ一番乗りしてスタートダッシュ
  2. 横尾までは横移動なのでタイムを巻こう
  3. 涸沢に着いたら受付前に先にテント設営しよう
  4. 受付時間までに奥穂高岳へピークハント
  5. テントへ帰還するもくたくたに…
  6. 賑わう涸沢カールの夜景撮影←ここから

 

涸沢のテント場で迎える夜

朝5時30分に上高地をスタートして涸沢カールでテント設営、その足で奥穂高岳をピークハントしたところでクタクタになる。言うて僕も若くはない。下山4日後には初のバリウム検査を控えているようなおっさんだ。トレーニングの頻度を上げたいところ(上げるとは言ってない)

日本一と呼ばれる涸沢カールの紅葉を後悔なく撮影するためにロケハンをしておく予定だったが、テントでハイボールを1本飲むと気絶するように寝てしまった。

寝てしまう前に撮影した最後の1枚は、涸沢ヒュッテの展望テラスからの眺め。トイレへ行く際に立ち寄ってみました。なんやかんやこの展望テラスが一番のロケーションだと思う。ロケハンしてないから知らんけど。

 

ふと、目を覚ますと辺りは真っ暗。

時刻は18時30分過ぎ。1時間30分ほど気絶するように寝ていたようだ。

夜の撮影もしたいところだけど、まずは夕食の支度を始めます。今回はそこそこロング登山だったので簡単なインスタント系(お湯入れるだけのやつ)にしました。なので本日は湯沸かし最強のジェットボイルを連れてきた。最近は出番が減っていたこいつも涸沢カールに来てご満悦。

 

箱買いしたアルファ米(尾西のやつ)が余っているけど、変化をつけようと思い「マジックパスタ」のカルボナーラを試してみた。食感がプリプリで味もちゃんとカルボナーラで美味しかったけど、パスタは携行時のサイズが嵩張るわりにはボリュームが物足りない。

単品だけなら尾西のご飯系の方がお腹が膨れますね。米なのでコンパクトだし。

 

 

これは涸沢ヒュッテの展望テラスからの1枚。この時間には雲ひとつ無い快晴でした。

この夜は満月。中秋の名月というやつですね。月明かりによって山々が肉眼でもくっきりと見えるし、消灯しているテントまでくっきりと撮影できた。

 

――遡ること数分前。

 

食後にトイレへと向かう途中、展望テラスには三脚がたくさん並んでいるのが見えた。

実は同日、富士山撮影の知り合いがタイミングよく涸沢入りしていることをSNSで見ていたので、少し気にかけつつ展望テラスへと立ち寄ってみた。まずは端っこのカメラマンの隣の空いているスペースから眺めをチェックすることに…

その端っこで撮影していたカメラマンが知り合いのminamingaokaさんの一行でした。

まさか長野県は北アルプス涸沢カールに訪れて富士山カメラマンにお会いできるとは思わなんだ。しかも通りがかりに一発で発見するだなんて。

涸沢ヒュッテは収容人数に対して定員を半数に絞っているため、部屋を広々と使えて快適だという話を聞きました。昨年までならもっとギュウギュウ詰めだと思いますが、紅葉シーズンの山小屋で広々と過ごせるのはいいですね。電話予約が大変だったようですが。

少しお話をしたところでトイレを我慢していたので僕はその場を去った。

その後、カメラを持ち出してこっそり近くで撮影したのがこの1枚というわけです。

この明るさならロケハンもできたと思うけど、ハイボールで一瞬にして寝落ちしただけあり頭がぼーっとするので、無駄に歩き回るより大人しく寝ておくことにした。満月は肉眼で満足して撮影はしてないです。

 

このブログを書いている時に写真を見返していて気が付いたけど、僕の飲んだハイボールには「濃いめ」という文字が…。どうりで回るのが早いわけだ。

 

モルゲンロートを狙って…

20時30分頃に消灯して、朝の5時に起床。

8時間近くは眠れたかな。普段よりも長い睡眠をとれたので気持ちがいい。

朝食を食べたりテント内を片付けているうちに時間が過ぎて、一眼レフカメラを持って撮影に出たのは6時過ぎのこと。すっかり日の出は過ぎているけど日が当たらないことには紅葉は映えないし、一番の目的であるモルゲンロートまでにも時間があったのでのんびりしていた。

もちろんロケハンをしていないので行き当りばったりの撮影になります。

涸沢ヒュッテの展望テラス近辺が無難だろうけど、やはり人混みを避けたいので人のいない方へと歩いていく。テント場からも離れていく。

 

涸沢ヒュッテからザイテングラートへと続く石畳の登山道を少し進むと紅葉するナナカマドの近くまでやってきました。このコース上で撮影することにします。

先客カメラマンは1名のみ。モルゲンロートの時刻が迫っているので先客の邪魔にならないように構図探しをする。山脈の先の方がにはすでに光が入っていますね。

 

6時9分撮影、紅葉とモルゲンロート。

ロケハン無しのぶっつけ本番だったので撮影場所を間違えた感が否めない。中央部の山肌が重なってしまいモルゲンロートの綺麗なラインが見られなかった。僕は紅葉に近づき過ぎてしまったが、モルゲンロートを撮影するならテント場や展望テラス近辺に留まるべきでしたね。

その代わりに紅葉したナナカマドを構図に入れることのできる場所。モルゲンロートは季節に関係なく狙えるけど、紅葉はこの時にしか狙えないのでこれで良かった。という言い訳。

先客さんがいた場所がおそらくベスポジなんだろうな。

 

ネットで見かけるような真っ赤なモルゲンロートではないですが間近で眺めると大迫力でした。

ナナカマドの紅葉は真っ赤な個体よりも、へグラーデーションになっている個体が個人的に好みでしたね。ピークより少し早い絶妙なタイミングだからこその個体。たぶん。

 

6時30分頃、日がだんだんと降りてきて涸沢小屋に差し掛かる。あのテラスにいる人達は口を揃えて「あったけー」と言ってるだろうな。

まだまだ撮影し足りないけど、狙いの展開が終わったのでここらでテントを撤収して下山準備に入ります。先程のナナカマドに日が差し込むのも時間がかかりそうだ。

 

テントの撤収と帰り支度を終えるもまだテント場には日が当たらない。周囲のテントもポツポツ減っていくが、おそらく連泊する人の方が多いだろうな。これから週末を向かるわけだし。

朝に撮影していた場所に日が当たり始めたので紅葉を撮影しに戻ることにします。パッキングを終えたところなのでカメラはコンデジのGRⅡだけです。

 

ナナカマドは真っ赤な個体が人気のようで、ベスポジらしき場所はカメラマンが増えていた。どんな構図で撮影できたのだろう。密を避けて近づきませんでした。

 

昨日の天候が嘘のように雲ひとつなく、好天に恵まれた紅葉が映えること映えること。この景色を後に1泊で下山するなんて勿体ないよなぁ。もう1泊したいなぁ。

いまの仕事をしているうちは1泊以上の登山が不可能なのが現状。

かなしい。

 

草木に囲まれた涸沢小屋が素敵。

涸沢カールには「涸沢ヒュッテ」と「涸沢小屋」が対面しています。どちらも魅力的なので宿泊するならどちらがいいか悩みますね。

しかし近頃は“テント泊はいいぞおじさん”になりつつある。写真を撮る人間であればテント泊は自由に動けていいと思う。

 

この紅葉が焚き火のドット絵のように見えました。それだけです。

 

撤収、そして下山

8時頃、名残惜しいですが下山することにします。

もう1泊できるのなら北穂高岳へ行きたかったですね。紅葉以外でも涸沢カールは魅力がたくさんあるのでまた別の機会に訪れます。

僕が宿泊した10月1日のテント数は150張という情報を見ました。数日前の4連休の850張が嘘のような空き具合だが、紅葉がピークを迎えるこの週末が凄そうだな。やはり平日最強。

 

涸沢ヒュッテには無料の飲用水があるので下山用の飲水に利用します。

粉末アクエリアスが1袋あれば500mlペットボトル2本を用意できるので、登りで空になったペットボトルは残しておきたい。山小屋や自販機で500mlを買うと500円はするので粉末アクエリアスがお得でおすすめ。

 

来年も都合さえつけば訪れたいな。

 

お世話になりました。

僕と入れ違いでこの日のテント場は混み合いそうだな。

 

もはや涸沢の醍醐味とも言えるであろう、もつ煮やおでんを食べながらの生ビールもやってみたいし、ソフトクリームもあったらしい。計画的に涸沢でのんびりできる時間がなかったので食べそびれたけど、それは来年の楽しみに残しておこう。

そして下山前にトイレへと寄ろうと思ったらバッタリminamigaokaさんに遭遇したのでご挨拶。彼らはもう1泊していくそうです。羨ましい。

 

好天に恵まれて実に名残惜しいが、下山スタート。

8時を過ぎる頃に涸沢ヒュッテ近くまで登ってきているハイカーもチラホラと現れる。おそらく横尾辺りで前泊してスタートダッシュしていたと思う。連泊が可能なハイカーはそういうプランも楽しそうですね。朝早いので登山道が混み合うこともなく気温もまだ低くて登りやすい。メリットしかない。

上高地を始発ダッシュしてもこの時間に到着は不可能だ。

 

下山スタートしても良い天気過ぎて何度も涸沢カールを振り返ってしまう。清々しい青空を見ながら「明日はもう仕事してるんだよな」と意識が現実へ戻されてゆく。

 

先行の下山ハイカーに追いついたりすれ違いなどで立ち止まる頻度が多かったが、それが悪いことばかりではない。絶景の涸沢カールを目指すハイカーはカメラ携行率が高いので、すれ違いざまに見ていると携行方法の参考になる。

確認できた範囲では下記のいずれのパターン。

 

  • カメラストラップをそのまま首から下げる
  • ザックのベルト部分に引っ掛けるやつ(伝われ)
  • カメラ用ショルダーポーチを体に斜めがけ
  • ショルダーポーチをザックにぶら下げる

 

朝とか夕方とかここぞという撮影タイミング以外ではザックに入れている僕は感心するばかり。登山中にいつでも撮影できるように工夫しているハイカーが多い。とくにカメラポーチをザックの外側に固定する発想には「なるほどなー」と思った。体の前にぶら下げるとなんやかんや邪魔だし、ザックへ入れるならカメラだけで容量がかなり圧迫される。なら外側にポーチを固定すればいいわけか。

僕も不意にライチョウに遭遇しても一眼レフカメラで撮影できるように携行方法を見直したい。でも登山中は登ることに集中したい派なので体の前に重量のあるカメラをぶら下げるのは気が引ける。

どうしようか。コンデジで我慢するか。

とか考えごとをしているとあっという間に下山できるのでおすすめ。

 

9時30分頃、横尾の吊橋へ到着。

青空の下の梓川が綺麗ですね。この標高ではまだ緑が生い茂って夏を感じます。

横尾までの下山はあっという間でしたが、ここからの林道歩きは非常に長い。下山であれば登りよりもコースタイムは短くなりますが、横尾〜上高地は横移動なので往路とコースタイムは変わらない。平均3時間のながーい林道歩きが始まります。

横尾を出た時に前を歩いていたハイカーのペースがちょうど良かったので、ピッタリくっついて歩きました。(10mくらいは空けています)よく見るとザックにゆるキャンのキーホルダーがあって親近感を抱いた。

 

10時50分頃、徳沢へ到着。

ここまでひたすら競歩に専念したので記録撮影はなし。

徳沢では相方からおすすめされていた「コーヒーソフト」を食べるために休憩タイム。ソフトクリームをコーヒーに沈めたやつです。ブラックの苦味のバランスが絶妙で、振りかけられたシナモンもいいアクセントになっている。大人のソフトや。

 

前日は悪天候で景色は楽しめなかったけど、帰りには絶景、絶景、絶景です。梓川がほんと綺麗で、それほど深くないのに水が青く澄んでいるのがわかる。

積雪した上高地のスノーハイクもしてみたいですね。

 

12時20分頃、川沿いを歩きつつバスターミナル裏に到着。

涸沢からのコースタイムは休憩込みで4時間20分くらい。タイムの変わらない横移動が長いので登りの5時間からあんまり短縮はされなかった。

 

河童橋には観光客が大勢だったので、お土産屋さんとか覗きたかったけどスルー。

観光客を見ていて感じたが、登山なんかしなくてもこの自然を満喫できる。

平地だけで散策ハイキングをしてもいいし、横尾までの各地でキャンプをしてもいいし、上高地の楽しみ方は様々。中にはザックをカートでガラガラ引いている人もいました。キャンプだけが目的ならカートでも移動できちゃうからナイスアイディアだ。

 

下山して真っ先になにか食べたくなったので「かっぱ焼き」を注文。コーヒーとセットのやつが少しお得でした。しかし意外と気温が高くホットにしたことを後悔。

ちなみに「かっぱ焼き」はたい焼き的なやつ。

帰りはバスで駐車場へと向かいます。バス停にはハイカー以外にも観光客も並んでいたけど1ターンで十分乗り込める人数でした。週末ならもっと並ぶだろうし、先日の4連休のエグい行列の動画を見ていたので拍子抜けです。

何度でも言うけど、平日最強。

 

〆のお風呂は「食事処しもまき」を利用。

僕よりも先に上高地を経験している相方パイセンにおすすめされたお風呂屋さん。さわんど駐車場から車で1分もかからないくらいの距離です。外観はこぢんまりとした食事処ですが、奥にお風呂施設も完備している。他に利用客もいなくて1人で満喫できました。

これが穴場というやつか。

お風呂上がりには月見そばにかき揚げをトッピング。

ご馳走様でした。

こうして僕は静岡への帰路につく。

 

 

紅葉の涸沢カールを訪れてみた感想

僕の訪れたタイミングでは紅葉は少しピーク前の様子でしたが、日本一の紅葉と言われる理由が十分に伝わるロケーションを目の当たりにした。紅葉のコンディションが完璧なタイミングをイメージするだけで何度でも足を運びたくなります。

これは毎年訪れたい。

春や夏にも訪れたい。

北アルプスをもっと知りたい。

僕はしばらく涸沢ロスに陥るほどの影響を受けた。

今回はじめて「富士山撮影」を目的としない登山をしたが、富士山のことを考えずに純粋に登山を楽しめた。富士山が不在の中で「主題探し」から写真撮影をする楽しさも味わいました。今まで縛りプレイをしてきたつもりはないけど写欲・山欲を高める良い機会になった。

もちろん富士山を好きな気持ちが揺らぐことはない。基本的に北アルプスを計画する場合でも「富士山の見え方」を真っ先に調べることになります。可能なら望遠レンズで富士山を切り抜くという強い気持ちでいたい。そこは譲れない。

そして涸沢の翌々週には北アルプス「燕岳」にも訪れたので、またブログにまとめます。

初めて訪れた紅葉の涸沢カールの登山記録でした。