こんにちは、アキです。
7月の梅雨明けのタイミングを見計らって、4泊5日で北アルプス裏銀座縦走コース1を縦走したときの登山記録(2人登山)です。
転職をして連休を取得しやすい環境になったので思い切って6連休を取得した。夏休み的な連休なんて何年ぶりだろうか。縦走登山5日+休息1日という使い方をします。
北アルプス裏銀座縦走の記録①
裏銀座縦走・雲ノ平・高天原(高瀬ダム〜新穂高温泉) / あきさんの前烏帽子岳(富山県)・双六岳・鷲羽岳の活動データ | YAMAP / ヤマップ
裏銀座縦走コースを歩くのですが、妻の希望で寄ってみたかった念願の場所へ寄り道するコースを計画。
高瀬ダム登山口より入山して双六岳まで行くんだけど、最終的には槍ヶ岳へは寄らないで鏡平山荘を経由して新穂高温泉駅へ下山するコースです。
寄り道というのは、4泊5日のうち2泊を使って「日本一遠い温泉」こと高天原温泉と、「日本最後の秘境」こと雲ノ平へ寄り道するものです。裏銀座まで来たときじゃないと訪れる機会がないので、せっかくだからということで今回の登山計画に組み込まれました。
ちなみに4泊すべて小屋泊です。
5日間の通過ピーク等の簡単な流れは下記にまとめました。
今回の「北アルプス裏銀座縦走2023」の4泊5日の日程表です。
山行記録 | 主な山名 | 利用した山小屋 |
---|---|---|
1日目の記録 | 烏帽子岳 | 烏帽子小屋(休憩) 野口五郎小屋(宿泊) |
2日目の記録 | 野口五郎岳 百名山水晶岳 | 水晶小屋(休憩) 高天原山荘(宿泊) |
3日目の記録 | 祖母岳 | 雲ノ平山荘(宿泊) |
4日目の記録 | 祖父岳 百名山鷲羽岳 三俣蓮華岳 双六岳 | 三俣山荘(休憩) 双六小屋(休憩) 鏡平山荘(宿泊) |
5日目の記録 | ※下山のみ | 中崎山荘 奥飛騨の湯 |
山行記録 | 主な山名 | 山小屋 |
---|---|---|
1日目の記録 | 烏帽子岳 | 野口五郎小屋 |
2日目の記録 | 野口五郎岳 百水晶岳 | 高天原山荘 |
3日目の記録 | 祖母岳 | 雲ノ平山荘 |
4日目の記録 | 祖父岳 百鷲羽岳 三俣蓮華岳 双六岳 | 鏡平山荘 |
5日目の記録 | ※下山のみ | 奥飛騨の湯 (中崎山荘) |
高瀬ダム登山口までのアクセス方法
今回は初の高速バス移動を利用した登山です。
裏銀座縦走をするには入山場所と下山場所が離れているので、マイカーでのアクセスは難しいのです。公共の交通機関の利用は避けては通れません。
(0日目)23:00頃、バスタ新宿からアルピコ交通の高速バスに乗車。車内で寝ている間に目的地へ到着して朝から登山開始できます。
4:45頃、信濃大町駅にて下車。
5:00着予定のバスだったけど少し早めの到着。
ここから高瀬ダムまで50分程のタクシー移動ですが、予約時刻までは余裕があったので朝食をとっておきました。我々よりも先に駅前に止まっていたタクシーがいて「まさか、あのタクシーじゃないよね」なんて話していたら、本当にそのタクシーだったという。
おかげで早めの行動ができます。
ちなにみ高速バスは満員だったはずだけど、信濃大町で途中下車したのは我々含めて4名だった。残りは白馬村まで行くんだと思う。
この辺りにはコンビニがなかったので高速バスに乗車する前か、休憩で立ち寄ったSAなどで食料を調達しておくのがおすすめ。
5:45頃、タクシーで高瀬ダムへ到着。
高瀬ダムがいきなり電波圏外なので、YAMAPの地図ダウンロードは予め済ませておきましょうね。妻が地図ダウンロードを忘れてずっとスマホとにらめっこしていた。
6:00頃、高瀬ダムを横目に登山スタート。
1日目の宿泊地、野口五郎小屋を目指します。
ついに北アルプス裏銀座縦走の旅が始まります。4泊もする登山なんてはじめてだし、5日間もずっと山を歩き続けることなんてできるのか不安もありました。
東京へ移住後は登山回数が減っていたので、この日の3週間前には訛っていた体にムチを入れるため塔ノ岳にて大倉〜蛭ヶ岳ピストンをしてきました。直近でのトレーニングに効果はあるのか不明だけど。
スタートしてすぐにトンネルを通過しますが、なかなか薄暗くて怖いです。(iPhoneだと明るく映りますが、肉眼ではもっと暗いです。)
トンネルの先の吊り橋を渡り、濁沢キャンプ場を通過します。スタートから10分でこのバリエーション。
キャンプ場を通過するときに足元の多肉植物に気が付きました。こういうのって勝手に生えているものなんですね。小さい多肉植物って可愛いですよね。
キャンプ場の先は河原の道なき道を歩きますが、目印があるので迷うことはなさそう。
6:50頃、高瀬ダム登山口へ到着。
ここから登山開始です。
日本三大急登「ブナ立尾根」
登山口は目立つので、よほどの視界不良じゃなければ迷うことはないと思います。
ついに「北アルプス裏銀座登山口」です。
なんとここから登るブナ立尾根が「日本三大急登」の1つなんです。バテずに登りきれるだろうか。表銀座も歩いたことのない私なんかが裏銀座へ足を踏み入れてもいいのだろうか…。
燕岳の「北アルプス三大急登」の合戦尾根は経験していますが、そんなレベルではないのでしょうね。
序盤から階段で標高を一気に稼いでいく。
このあともずっと急登は続くけど意外とすんなりと登れていた。「日本三大急登」と言われると身構えてしまうけど、けっこう拍子抜けしたコースでした。初日なので体力MAXなのもありますけどね。
そもそもブナ立尾根でバテていたら裏銀座を縦走なんてできません。
この急登は景観がほぼゼロ。1回だけ景色の良いところを通過したくらいで、ほぼ無心で登り続けました。
ちなみに新品の登山靴をぶっつけ本番で履いてきたのと、日本三大急登の洗礼が重なって早々に靴ズレしてしまった。しかしキズパワーパッドが優秀だったので、その後の登山に影響は出ませんでした。
10:30頃、烏帽子小屋へ到着。
高瀬ダムからのコースタイムは4時間半。ブナ立尾根を登り切ると山小屋が級に現れたので、ここまではずっと日本三大急登を登っていたことになります。
でも急登はここまでなので、あとは尾根歩きと考えたら気持ちが楽になります。
烏帽子小屋の前には満開の花畑が広がっていました。チシマギキョウという花のようです。ここでようやく山々の景色が見えたことも合わさってとても癒やされます。
荷物をデポして烏帽子岳ピストン
まずは山小屋で食事休憩にします。
烏帽子小屋でカップ麺と、行動食のあんぱんを購入。4泊5日分の食料を持参するのは現実的ではないため、立ち寄った山小屋で食料を調達する必要があります。価格は気にせずに散財しましょう。
ちなみに高速バス、タクシー、山小屋4泊、食料費などかかるので1人10万円くらい持ってきています。
食事休憩が済んだらザックは烏帽子小屋へデポし、カメラポーチだけ持って烏帽子岳ピストンをします。(パーゴワークスのカメラポーチを新しく購入)
デポする場所は小屋番さんへ確認。
烏帽子岳を踏むためには、裏銀座縦走コースから外れてしまうので烏帽子小屋からピストンすることになります。烏帽子岳までは片道45分コース(標準タイム)ですが、体力を温存したい方はスルーして先へ進んでもいいと思います。
烏帽子岳は二百名山です。百名山だったら無理してでも踏みたい方は多いかと思う。
11:00頃、烏帽子岳ピストン開始。
すぐ近くに見えるピークを目指します。
普段より重たいザックでブナ立尾根を登ってきた直後なので、ザックを下ろした途端に(亀仙人の甲羅的な効果で)体がフワフワと軽い。まあ調子に乗るとすぐにバテるんだけどね。
日本三大急登に体力を削られていたのが分かります。
前烏帽子岳(標高2,605m)へ到着。
序盤から見えていたピークは烏帽子岳ではなかった。「なんだ近いし楽勝じゃん」なんて思ったのは束の間に現実を思い知らされる。この山、ニセ烏帽子とも呼ぶらしい。
前烏帽子岳からようやく本命の烏帽子岳が視認できました。まだ中間地点だったようで、意外と距離があって少し気が遠のいた。
ここから見えた烏帽子岳は、少し燕岳っぽい気もする。烏帽子岳の名前の由来は、帽子の「烏帽子」に見えるからだそうです。
そびえ立った岩が烏帽子岳の頂上部になります。
この縦長の柱状の岩を「オベリスク」と呼ぶそうですが、オベリスクと言えば南アルプス地蔵ヶ岳のイメージがあります。とくに1つの山の名称ではなく、似たような山容を共通してオベリスクと呼ぶのですね。
オベリスクを登って頂上を目指します。
先行ハイカーが岩をよじ登っていますが、見ている分には怖そうだけど実際に登ってみると全然平気なやつです。
鎖場は落ち着いて登れば問題ありませんが、雨上がりなどで濡れていると滑って危険そうです。
11:40頃、二百名山の烏帽子岳(標高2,628m)へ到着。
今回の裏銀座縦走における初ピークです。(前烏帽子岳はノーカン)
頂上看板よりも少し高いところまで登れます。
鎖場を登ると岩と岩に挟まれて景観が悪くなって微妙でした。頑張って岩をよじ登って烏帽子の先っぽへ立つ人とかいそう。
12:30頃、烏帽子小屋へ戻りました。
頂上での滞在時間を含めて往復90分くらい。
小休憩をしてザックを回収したら、1日目の宿泊地である野口五郎小屋を目指して裏銀座縦走コースを歩き進みます。ブナ立尾根での疲労がジワジワ来てますが、まだけっこう歩きます。
ツキノワグマとの初遭遇
13:00頃、烏帽子小屋を出発。
この先はずっと野口五郎岳方面への尾根歩き。ようやく「高山に来たんだ」と感じさせる景色が広がって疲れも解消されますね。
次に通過予定のピークは三ッ岳(標高2844.8m)ですが、気がついたら巻き道を歩いていたのでスルーしてしまった。マイナーピークなので引き返しませんでした。
烏帽子岳方面でも見かけたが、この辺りはコマクサが多く群生している。
写真だと群生感が分かりづらいけど綺麗に咲いています。
高山植物の女王、コマクサ。
他の高山植物が生えない乾燥した砂礫地に咲く、孤高の花。
それにしてもRICOH GRIIのマクロモードが便利すぎる。カメラを始めてから一眼レフやミラーレス一眼を使ってきたけど、なんやかんや一番使っているカメラはGRIIなんですよね。
なんて足元のコマクサに気を取られていると、妻が声を上げた。
「アキ、クマ!」
その声で気がついたけど、三ッ岳近くの斜面にツキノワグマを発見しました。距離にして100m以上は離れていたのかな。焦点距離120mmのカメラでこの写真くらいの距離感です。
熊って茶色いイメージだったけどツキノワグマは真っ黒です。真っ黒すぎて山肌にいるとすごい目立つんですよね。
熊はこちらに気がついておらず、彼の進行方向は勝手に離れていくコースだったので、とくにアクションは起こしませんでした。
動きをよく見ると子熊のようにも見えました。それは母熊も近くにいるという意味なので、もしそうだとしたら危険です。
我々の会話が届いたのかこちらに気がついた様子。しかし向かってくることもなくハイマツの中へと消えていきました。
初めて熊に出会った感想は「かわいかった」です。熊ってズルいよね。近くで出会ったら怖いのに、離れて見てる分にはかわいいんだから。
熊の撮影に熱中する私。
いきなり目の前で出くわすよりは、遠目に見ることで心の準備ができた気がします。登山をしていれば、いつ熊と遭遇してもおかしくないという事実を忘れてはいけないですね。
熊に足止めされたというよりも、熊の観察で足を止めていたというのが正しい。
気持ちを野口五郎へ切り替えます。
14:20頃、三ッ岳を過ぎたところで分岐ポイント。
稜線コースとお花畑コースに分岐しますが、どちらへ進んでも結局は合流します。ガス気味なので稜線コースを歩いても景色は楽しめなさそうで、お花畑コースと言う名の実質「巻き道」だったということで、お花畑コースを選択。
もう体力的には「早く山小屋で休みたい」という気持ちで楽な方を選んじゃいました。
お花畑コースは本当に高山植物に囲まれたコース。
名前は不明だけど、この写真の花がたくさん咲いていた。
2人して「野口五郎はまだかー」なんて愚痴り始めるころに、ようやく山小屋の気配が…。
やっと着いたー。
15:40頃、1日目の宿泊地である野口五郎小屋(標高約2,780m)へ到着。
ブナ立尾根を登り切って烏帽子岳ピストンし、そこそこ疲労していた状態から2時間40分歩き続けていました。
裏銀座縦走1日目のコースタイムは9時間40分。
なかなかのボリュームでした。
1日目の宿、野口五郎小屋
看板に書かれた標高2943.3mというのは野口五郎岳の標高なので間違えないように注意です。山小屋のある場所は標高2,780mだそうです。
販売されていた貴重な水は薬品臭が強めですが贅沢は言えないため、粉末アクエリアスを入れて翌日の飲水にします。こんな山の上で水が手に入るなんてありがたいことです。
外部リンク:野口五郎小屋|北アルプス|裏銀座|山小屋|長野県大町市
小屋の外観です。山小屋ってパッと見はこじんまりとしているけど、中に入るとすごい広々としてるんですよね。
夕食のカレーライスには、ハートの目玉焼きと味噌汁付き。
食後は野口五郎岳ピークを眺めながら1杯。
裏銀座1本目のアルコールは缶チューハイにしました。瓶のワインやのウイスキーとか置いてあって、アルコール類は充実していました。小屋番さんにハイボールがないか訪ねたら、サイダーとウイスキーを購入して割るといいかもと提案された。
景色は全体的にガスっていたのでカメラの出番は少なめ。
ガスっているということはブロッケン現象を狙っちゃいますよね。
妻とツーショットブロッケンを撮影しました。
0:00頃、天の川の撮影。
布団に入って朝まで寝るつもりだったけど、深夜に他の宿泊客の足音で起きてしまった。ふと夜空の状況が気になったので、ダメ元でカメラ機材を持って外へ出てみた。
はじめはガスっていたけど、少しだけガスが晴れたところで天の川を視認できたため急いでカメラをセット。野口五郎岳ピークから立ち昇る天の川をバッチリ撮影できました。
ナイスタイミングに起こしてくれた宿泊客に感謝です。そして星用レンズにZ20mm F1.8やハーフプロソフトンを持ってきた甲斐がありました。
1日目の疲れがすべて吹き飛んだところで布団へ戻りました。
2日目は裏銀座縦走コースを外れて、高天原温泉を目指します。
- 真夏に「日本三大急登」ことブナ立尾根を登り切るだけでも、満足感のあるボリュームなので、体力に不安のある方は1日目は烏帽子小屋で宿泊でもいいかも。
- ちゃんと熊がいるので熊鈴は(無いよりは)あった方がいい。
- ハイカーで賑わう表銀座よりも人が少なくて、南アルプスのような静かな稜線歩きを楽しめる。(でも山小屋に人が多くて安心)
- 水は貴重なので贅沢は言わない。
使用した撮影機材
脚注
- 北アルプス「裏銀座縦走コース」とは、大町市七倉温泉(高瀬ダム登山口)から入山して、「日本三大急登」ことブナ立尾根を登り、烏帽子・野口五郎岳・水晶岳・鷲羽岳・三俣蓮華岳・双六岳を通過して西鎌尾根から槍ヶ岳へ到達する縦走ルートのこと。 ↩︎